HSPって精神疾患や発達障害とどう違うの?
そんな疑問に答えます。
今回は「ADHD(注意欠如多動性障害)編」です。
HSPとADHD(注意欠如多動性障害)
ADHD(Attention-deficit/hyperactivity disorder:注意欠陥多動性障害)とは、脳内の神経伝達物質の一つである『ドーパミン(幸せホルモンとも)』、これはやる気や感情に作用する物質ですが、そういった物質機能(その他、ノルアドレナリン、セロトニン)の障害により不注意や多動性・衝動性が特徴的な、神経発達障害の一つです。他にも遺伝的要因や環境要因も原因ではないかとも言われています。
ここまで順に読んでくださった方は、もうオチが読めているかもしれません。結局、HSPと精神疾患・発達障害は似て非なるもの、それでもなかには共通点もあり、併発する可能性もあると。HSPとよく比較されたり混同されがちなのは、やはり特徴として重なる部分があるためで、そこをきちんと見極めるには正しく深く理解することが大事なのです。
では、なぜ見極める必要があるのか?
HSPは心理学用語として存在し、精神疾患・発達障害は精神医学上の扱いになります。
HSPはこころの悩み、精神疾患・発達障害はこころの病といったニュアンスでしょうか。
HSPの人は、「病ではないんだ」とホッとするでしょう。ですがその分、理解を得られにくく苦労することもあります。
例えば、仕事で働きづらさ・生きづらさがあって毎日が辛い時、
精神疾患・発達障害であれば、いっそ医師から診断書をもらって休職し、ストレスフルな環境から一旦離れることができますが、HSPでは医学上の範囲ではないため医師も診断書を出すことができず、診断書による休職制度の利用が難しいのです。休職に代わるのは、みんなが利用している有休消化や祝日・大型連休くらいのものです。
自分はどの位置にいるのかを把握する(グレーゾーンも含めて)
そのためにはどんな種類があるのか、視野を広げる必要もあります。仕事が辛いのはみんな同じだし当たり前と思って頑張っていたら実はうつ病だった、自分の性格の問題だと思っていたらADHDだったとか・・・。
もっと早くわかっていたらサポートを受けられたかもしれない、辞めるまでいかなくて済んだかもしれないなど、やはり、知ること・理解することは大事なのです。自分のことはもちろん、周りの人の中に、該当するのではないかと思う人がいれば、接し方・付き合い方の参考になるかもしれません。
併発している方の中には、「併発しているんだからどうでもいい」という意見もあるでしょう。
たとえ併発していても、薬である程度抑えられる部分と、気質だから薬云々ではない部分があると思うのでしっかり把握し、そこにどうアプローチしていくかということが必要だと思います。
目に見えない・分かりづらく曖昧な部分もあるということもあり、医師の判断によって診断も異なる場合がありますが、自分でも見識力をつけると自分の内面を主観的・客観的に把握しやすくなってくるでしょう。
そんな思いでこのシリーズを書いています。
前置きが長くなりすみません。今回のテーマ、本題に戻ります。
ADHDは、下記のアメリカ精神医学会によるDSM-5という「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」内の1~5のすべてを満たしたとき初めて診断されます。
『●ADHDの診断基準
ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)より引用、一部抜粋
- 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
- 症状のいくつかが12歳以前より認められること
- 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
- その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと』
不注意や衝動性、多動性は子供のころからあり、「ちょっと変わった子」と言われることがあったりします。でも「子供というのは落ち着きがなく、興味もったり思いついたことはよく考えずにすぐ突っ走るものだ」と親でも気づかず、本人もそのまま大人になり、後になって気づくパターンも少なくないようです。
ADHDに限らず、発達障害は大体子供のころから特性があって、年齢を重ねるごとに軽減していく人もみられるようですが、完全になくなるというのは可能性として低く、大人になっても発達障害の特性で悩む人「大人の発達障害」という言葉もあるくらいです。
というか、『“発達障害”なんて言葉、私が子供のころにはありませんでした』という声も聞きます。確かに、「発達障害者支援法」という発達障害の方を社会全体で支えていこうとする法ができたのも平成17年のことで、割と最近です。
①注意欠如
注意力が不足または持続している時間が短く、外部からの刺激があると注意が逸れたりして細部へ注意を払うことが困難なため、忘れ物やなくし物、うっかりミスが繰り返しよく起きる傾向があります。全体的に何事においても注意力が乏しいのかというとそうではなく、むしろ、自分の興味対象については寝食を忘れるほど集中して取り組む「過集中」というのも特徴の一つです。好きなことにはびっくりするほど熱中し、好きではないことには集中力が切れやすい・・・とても分かりやすく、自分の好き・興味あることをすぐに見つけやすく、そこに向かって喜びをもって極めるところまで極めていけるので、天才肌と言えるのではないでしょうか。自分のやりたいことが分からない、好きだけどそこまで追求していくほどではない、だから今の仕事も好きというわけではないけど収入のためにやっている・・・という人から見ると羨ましく映ります(私)。
自分の好きなことにずっと集中していられるのは素晴らしいことだと思うけどな。
でも「寝食を忘れて」となると、生活リズムの乱れや仕事であれば勤務時間は限られていて納期なんかも意識することが求められるから策を練る必要があるね。
②多動性
興味があることでなければ持続性・集中力を発揮しないことから、「ずっと同じところにじっとしていることが苦手」「人の話を最後まで聞いたり、列に順番に並んだり長い時間待っていられない」「物事が続かず飽きっぽい」「意見や行動がよく変わる」などが見られます。ADHDみんなが同じ度合いで当てはまるかというとそうではなく、人によって「注意欠如が色濃く出るタイプ」や「多動性・衝動性が特に強いタイプ」「まんべんなくのタイプ」など出方はそれぞれです。新しいことを始めたり、いろいろと動いているうちに考えが変わり・・・と経験値は高めで、見聞き・経験した様々なことからインスピレーションを得て創造性が働きやすいと言えます。現在、仕事の種類や働き方なども多様化しつつありますが、欠点として捉えられがちなこうした特徴を「秘められた可能性」として迎えられる分野を見つけることや、条件が整えばとてつもない能力を発揮するという認識がもっと広がれば二次障害のリスクや生きづらさが軽減するでしょう。
③衝動性
「思い立ったらすぐ行動する」「思ったことをあまり考えずにすぐに口にする」「しゃべりすぎてしまう」「衝動的にカッとなる」など、頭の中が多動していて整理が追い付いていないため、計画的に優先順位を決めて取り掛かること、片付け・整理整頓が苦手だったりします。ちなみに、『朝寝坊や遅刻が多い』ということも言われますが、これは「注意欠如」の傾向からや、「過集中」による寝不足、「時間を逆算して行動したり計画を順序立てて行動するのが苦手」ということがあるためと考えられます。これだと思ったらすぐに動くため、「行動力が高い」「フットワークが軽い」と言い換えることができます。そのため、躊躇している間にチャンスを逃すということは少ないのではないかと思います。
まとめ
ADHDの主な特徴である「注意力・多動性・衝動性」をHSPとの比較でもってまとめます。
【注意力】:いわば「石橋を叩いて渡る」感じで、いろいろと察知して細部に注意を払うところがあります。
(例)『明日は行ったことのない場所に行くし相手を待たせてしまうかもしれないからいつもより30分早く起きよう』
『ここに物を置いておくと視界が遮られて事故につながるかもしれないから退かしておこう』
→細部に神経を張り巡らせてミスを防ぐことが多いので、注意力欠如には該当しないでしょう。
【多動性】:外部からの刺激を良くも悪くも半無条件反射で受け取ってしまうため気が散りやすい、結果多動的になるということで類似しています。また、刺激に対して好奇心旺盛でアクティブなHSS型HSPは、ずっと同じことをしたり同じ環境にいるのが苦痛になってくる傾向は共通しているように見えます。
【衝動性】:HSS型HSPは刺激に積極的に向かっていくのでそういうところがあるかもしれませんが、HSPは基本、先読み・深読みして慎重になる傾向があるため、一概には衝動的とは言えません。