HSPって精神疾患や発達障害とどう違うの?
そんな疑問に答えます。
今回は「うつ病/双極性障害編」です。
HSPとうつ病
この2つは、全く別ものとは言えない、密接な関係にあります。
HSPの人が皆うつ病というわけではありませんし、根本的に違う点がありますが、HSP気質がうつ病の原因になりうることもあります。
症状が似ているため、知名度の高い「うつ病」と誤解されてしまうことがあり、注意が必要です。
『うつ病は、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気だと考えられています。これらの神経伝達物質は精神を安定させたり、やる気を起こさせたりするものなので、減少すると無気力で憂うつな状態になってしまいます。
うつ病|こころの病気について知る|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省 (mhlw.go.jp)厚生労働省e-ヘルスネットより引用、一部抜粋
ですから、うつ病は決して怠けているわけでも、気の持ちようで何とかなるものでもありません。しかも、うつ病は日本人の約15人に1人が一生のうちにかかるという非常にありふれた病気です。早めに適切な治療を受けることが必要です。』
知名度はうつ病の方が高いのに、割合はHSPの方が高いんだ・・・
ちなみに、うつ症状と躁状態を繰り返す双極性障害(躁うつ病)というのもあるんだって
※躁とは、『気分が高揚する』『楽観的になる』など、うつ症状とは逆の状態を指します。
うつ病の特徴
『次のうち5つ以上(1か2を含む)が2週間以上続いていたら、専門家に相談することをお勧めします。
- 悲しく憂うつな気分が一日中続く
- これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない
- 食欲が減る、あるいは増す
- 眠れない、あるいは寝すぎる
- イライラする、怒りっぽくなる
- 疲れやすく、何もやる気になれない
- 自分に価値がないように思える
- 集中力がなくなる、物事が決断できない
- 死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思う
うつ病の症状は、始めのうち、こころの不調ではなく体の不調や行動の問題として現れることがほとんどです。』
うつ病|こころの病気について知る|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省 (mhlw.go.jp)厚生労働省e-ヘルスネットより引用、一部抜粋
うつ病の特徴1~9をひとつずつHSPと比較していきます。
①悲しく憂鬱な気分が一日中続く
確かに、HSPのなかにもミスしたり怒られたときは引きずり立ち直りに時間がかかることがあるので、そこは似ている部分はあると言えます。
②これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない
HSP、特に刺激を求めるタイプのHSS型だと、刺激に対してアクティブで自分の興味に向かって突き進んでいくため、興味があるという前提で成立すると考えられます。そのため、②はHSPに共通する部分ではないでしょう。
③食欲が減る、あるいは増す
HSPは空腹にも敏感で、空腹になると目の前のことに集中できなくなったり気分が悪くなったりすることがあります。また、空腹によりお腹が鳴ってしまうことを周りに気づかれやしないかと、そこに対してもセンサーが働くので、空腹による不安感や情緒不安定さをなくすために過食になるHSPも少なくないようです。なので、一部、過食傾向にあるという点で似ていると言えます。
④眠れない、あるいは寝すぎる
これはHSPの特徴の一つに合致しています。なぜなら、HSPは人一倍繊細なために心身が疲れやすいので、その疲れを癒し、体調の安定を図るためによく眠る人が多いです。一方で、五感が鋭いので睡眠時にスマホの光や何かの音などで気になって眠れないとか、その日に起こったことを引きずって眠れないといったこともあり、『眠れない』、『寝すぎる』の両方とも当てはまります。
⑤イライラする、怒りっぽくなる
HSPは、他人の感情に共感できるということや、他人の言動、周りの様々な情報を五感から受け取るためストレスがかかりやすくイライラしやすい、怒りっぽくなりやすいことがあります。
⑥疲れやすく、何もやる気になれない
『何もやる気になれない』は、②の『これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない』でお話ししたように、刺激追求型のHSPにはあまり当てはまらないでしょう。ただ、『疲れやすい』というのはHSPの気質でもあるのでそこは当てはまります。
⑦自分に価値がないように思える
HSPは自己肯定感、自尊感情、人生に対する満足度が低い人が多いと言われています。ただ、同時に感受性が非常に高く、特に「美的感受性」が高いと人生に対する満足度や自尊感情等の低さを補えることが研究で分かっています。その高い感受性をどこに向けるかでここは左右されるのではないかと思われます。よって、ここでは一部当てはまるとしておきます。
⑧集中力がなくなる、物事が決断できない
③『食欲が減る、あるいは増す』のところで、空腹時に集中できなくなったり気分が悪くなることがあるとお話ししましたが、空腹時に限らず対人関係や、他の雑音や光など五感から不快なものに触れたとき、気になって集中できなくなる、いろいろと深く考える性質も相まって物事が決断できない傾向でもあります。ただ、HSS型は衝動的に刺激を求めて行動する傾向があるので一概には言えないでしょう。
⑨死にたい、消えてしまいたい、いなければよかったと思う
ここが明らかに違うところかなと思います。⑨は希死念慮といい、『これといったわけもなく、生きることに消極的で、ただ漠然と死を考えること』であり、誰もが一度は経験するであろう『他人に迷惑をかけてしまったから消えたい』とか『仕事が辛いから死にたい』など、理由のあるものとは別ものです。なので、希死念慮はうつ病特有の症状であり、HSP気質が共通して持っているわけではありません。
まとめ
うつ病の特徴を一つ一つHSP気質と照らし合わせて見ていきましたが、結構似ているところがありましたね。
しかし、根本的な部分、概念や定義など異なる点もいくつかあります。例えば、うつ病は精神医学上の概念、HSPは心理学上の概念であり、その他、うつ病は病名であり治療薬がありますが、HSPは病気ではないため治療薬はありません。それから、うつ病は後天的に発症するものであり、HSPは先天的なもの+後天的なものからなるという点でも相違があります。
ここまでをまとめます。
・希死念慮があるかどうか
・不調時の体調(うつ病の方が重く悪い傾向)
・原因(HSP:生まれつきの気質+生育環境、うつ病:後天的で環境要因による)
・性格(HSP:基本性格は変わらない、うつ病:かかったら性格が急に変わることがある)
・定義(HSP:心理学上の概念で「特性」、うつ病:医学上の概念で「精神疾患」)
・疲れやすさ、気分の落ち込み
・眠り過ぎる、あるいは眠れない傾向がある
・イライラしやすい
・ネガティブ感情になりやすい
ひとつ注意したいのが、HSP気質の人はストレスを抱えやすく、そこから「うつ病」や「対人不安」になる可能性は大いにあるということです。日ごろからストレスを溜めない、できることなら極力回避する、その都度発散していくなどしていく必要があります。
HSPと双極性障害(躁うつ病)
双極性障害とは、気分の高揚と落ち込みの両極端の状態が(それぞれ数週間から数年という期間で)繰り返される気分障害と定義づけられています。
憂うつな気持ちがあったり、気分が落ち込んでいるなどの症状、うつ状態についてはうつ病のところで解説しましたので省略し、今回は躁状態に焦点を当てて考えていきます。
『躁状態とは、気分が著しく昂揚した状態が一定期間つづきます。躁状態が進むと気が不必要に大きくなったり、注意力が極端に散漫になったり、買い物などに耽ったり、多弁になったり、睡眠欲求がなくなったりします。性格が明るく開放的になる場合や、イライラしたり怒りっぽくなるなど攻撃性が高くなる場合、その両方を示すこともあり社会生活に支障を来すことがあります。』
双極性障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)厚生労働省e-ヘルスネットより引用、一部抜粋
双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型:(社会生活に支障が出るほどの)躁状態とうつ状態が繰り返される
Ⅱ型:(社会生活に支障が出ない程度の)躁状態とうつ状態が繰り返される、うつの期間が全体の約半分を占める
Ⅱ型の方が出方が軽いということだね
うん、でもそれゆえ診断やHSS型HSPとの見分けも難しいとされているよ
専門家でさえ診断が難しいとされていることであり、興味や刺激の対象や度合い、行動にも個人差があるため、ここではあえて一つ一つの特徴を掘り下げることはしないことにします。
HSPの4つのタイプについて理解が進んでいる方はピンと来たかもしれません。
理解が追い付いていないという方は、こちらの記事(https://sensaikousatu.com/what-is-hsp/)で解説していますのでよかったらどうぞ
HSS型HSPは刺激に非常に敏感でありながら刺激を求めていくタイプということで、刺激を求めていくときの積極性が、双極性障害の特に躁状態と似ているところがあります。
HSS型HSPの特徴
・新しいことや環境の変化を求める、飽きっぽい
・人と積極的に関わっていくが、人の頼みを断ったり頼むことが苦手
・自分の求める刺激や興味の対象を見つければ行動せずにはいられない
・些細なミスを気にしてしまう
などが特徴としてあります。
刺激は好奇心を掻き立てる要素にもなりますが、ストレスとしてのしかかってくるとうつ状態にもなりやすいです。
まとめ
HSS型HSPと双極性障害で明らかに違う点は、双極性障害は精神疾患の一つとして医学的な治療法が確立されていること、対してHSPは本来の気質とされており心理学上の概念のため医学的な治療が確立されていないということです。
ただ、HSPで双極性障害をお持ちの方もいらっしゃるので、はっきり両者を区分けするというよりも、グレーゾーンがあったり関連性が高いということを把握すること、そして、自分を内観し、生きづらさを感じているのはどんなことで、どうすれば解決に向かうのかというところに視点を向けることが大事なのではないかと思います。