HSPって精神疾患や発達障害とどう違うの?
こんな疑問に答えます。
今回は「ASD(自閉症スペクトラム障害)編」です。
HSPとASD(自閉症スペクトラム障害)
ASD(Autism Spectrum Disorder:自閉症スペクトラム障害)とは、発達障害の一つで、以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」など細分化されて個々に独立していましたが、これらは境界が曖昧で虹のグラデーションように連続しているという意味の『スペクトラム』という表現で、2013年のDSM-5という、アメリカ精神医学会(APA)の診断基準によって統一されたものです。
原因ははっきりと解明されていませんが、親のしつけによるものではないということと、70~90%の遺伝率があると説いているところもあります。
『自閉スペクトラム症の診断については、DSM-5に記述されており、下記などの条件が満たされたときに診断されます。
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)より引用、一部抜粋
- 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
- 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ など)
- 発達早期から1,2の症状が存在していること
- 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
- これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと』
少々難しめに書かれていますが、簡単に特徴をまとめてみるとこんな感じです。
ASDの特徴
・人の感情を読むこと、社会関係の持続やコミュニケーションの困難さ
・行動や興味の範囲が限定的でこだわりが強い
・行動や会話が反復的
・感覚刺激に対して過敏または鈍感
・発達早期から症状があり、対人関係や学業、職業に障害をきたしていること
・発達の遅れや知的障害などでは説明しきれないこと
ひとつずつ、HSPと照らし合わせて見ていきます。
①人の感情を読むこと、社会関係の持続やコミュニケーションの困難さ
『社会関係の持続やコミュニケーションの困難さ』は、HSPにも内向的、外向的タイプがあり、外向的なタイプのHSPであれば、人とのコミュニケーションをとり関係を築いていける方もいるので当てはまらない場合があります。一方、内向的なタイプだと、人との関わりを回避する傾向にあるのでコミュニケーションや対人関係の困難さがついてくるでしょう。なので、一概に類似しているかどうかは言い切れません。
『人の感情を読むこと』に関しては、HSPは読み過ぎる、ASDは読むことが困難とされています。これは脳の扁桃体という、情動や社会性に深くかかわる部位や側頭葉がASDでは低下していること、HSPでは逆に扁桃体の機能が強いことが影響しています。扁桃体や側頭葉の機能が低下すると、人の表情から感情を推測したりすることが難しくなるためです。
②行動や興味の範囲が限定的でこだわりが強い
これは個人差があると思います。刺激を追求していくタイプのHSPも確かに存在しますが、ただ、一般的にHSPが限定的な行動や興味を示し、こだわりが強いという言及はあまり聞きません。もしかしたらHSPの「細かなところが気になる」という気質が興味への探求にも働いて、時としてマニアックに映ることもあるのかもしれません。
③行動や会話が反復的
HSPは反復的というより、相手と会話する時に相手の言葉から意図を汲み取ろうとして深く考えてから話す傾向があるので、会話がスムーズにいかなかったり苦手だったりします。行動については、例えばHSS型HSPは新しいことが好きで飽きっぽいところがあるので、一概に反復的とは言えないでしょう。
④感覚刺激に対して過敏、または鈍感
ASDは光や音などに過敏ですが、見通しが立たないことに不安を感じたりもします。対してHSPは、説明するまでもないかもしれませんが、「人一倍、刺激に対して過敏」なので、過敏という点は程度の差はあれど、共通しているでしょう。また、そのため、感覚刺激に鈍感というのはHSP気質とは逆のことなので当てはまりません。なぜ、ASDは過敏さと鈍感さの両極端を持ち合わせているのか?感覚処理障害(SPD)という、感覚に対する処理の不具合が生じているためと言われています。
⑤発達早期から症状があり、対人関係や学業、職業に障害をきたしていること
両者とも先天的でそれぞれ生きづらさを抱えがちです。医師によっても診断基準が異なり、また、生きづらさや感じ方の度合いの判断も個人差があり、難しいところがあります。ASDは幼少期からそのこだわりの強さやコミュニケーションの困難さなどから悩まれる方が多いですが、障害という言葉の定義から考えて、何か物事を進めるのに妨げになったり、対人関係や日常生活に支障をきたす、本人が困っているかどうかというのがカギとなるでしょう。
⑥発達の遅れや知的障害などでは説明しきれないこと
HSPは発達の遅れや知的障害は見られません。そしてASDは、必ずしも皆が知的障害を持っているわけではありませんが、アメリカではASDの約7割は知的障害が見られると言われています。
まとめ
・知的障害、発達の遅れの有無
・脳機能の働き(HSP:扁桃体の機能がよく働く、ASD:扁桃体をはじめ、側頭葉や前頭前野の機能が低下)
・対人感覚(HSP:人の表情や言葉から感情を敏感に察知しすぎて疲れる、ASD:相手目線で考えるのが困難)
・定義(HSP:心理学上の概念で「特性」、ASD:精神医学上の概念で「発達障害」の一つ)
・光や音などの感覚に敏感
・自己肯定感が低い傾向
・起因は異なるが、生きづらさを抱えている
・深く考える