相手からの依頼や誘いに対して、後になって自分の対応に後悔したりモヤモヤしたりする
相手のことを優先しすぎて自分を抑えてしまう
人に依頼や自分の要望をうまく伝えられない、苦手
思えば自分のことばかり主張してしまっている
きちんと相手本人と向き合ってコミュニケーションを取れていない気がする
自己主張が苦手な人のために始まった
「アサーション(Assertion)」とは、直訳すると「主張」や「断言」など、「アサーティブコミュニケーション(Assertive Communication)」は「断定的なコミュニケーション」と出てきます。
本来の目的は、「自分と相手の両方の主張や価値観を尊重しながら良好なコミュニケーションを図ること」なので、直訳とは意味合いが少し異なります。これは、1950年代のアメリカで自己主張や対人関係がうまくいかない人のためのカウンセリング法として始まったという、もとの背景が関係していると考えられます。
アメリカって、自己主張がしっかりできる人がたくさんいるイメージがあるからアメリカ発祥なのは意外!
そこから広まって、人種や女性差別などに対する撤廃運動にも影響を与えたとされているよ
「アサーション」「アサーティブコミュニケーション」の他、「アサーティブネス」などと呼ばれていますが、唱えていることは同じなので、呼び方が違うだけと思っていただいて差し支えありません。
アサーティブコミュニケーションとは?
簡潔に言うと「自分も相手も両方を尊重しつつ、お互いが納得してWin-Winになることを目指すコミュニケーションの方法」のことです。
ということは、自分の意見を主張することと、相手の意見を聞くことが必要になってきます。
ですが「主張」というと、一方的なイメージがありませんか?
確かにそうなんです。例えば、
「私は和食が食べたい」
「明日から税金を●%上げます」
「この仕事明日までに仕上げてほしい」
など・・・これは自分が意見を主張する、つまり自分を尊重している、ということになります。
でもそれだけだと自分の意見を主張しているだけであって、相手や相手の意見を尊重していることにはなりません。自己主張だけでこちらの主張を聞いてくれないと、相手も受け入れづらいですよね。
なぜなら相手は
「私は中華の気分なのに・・・」とか
「ええ!?いきなり?!困るよ、やりくりしてやっと黒字にもってきたところなのに」とか
「今帰るところなのに~・・・」
といった具合に、相手には相手の主張や思いがあるからです。それを聞かないということは、無視している=尊重していない、ということになるのです。だから言い争いになったり、一方が我慢することになったりする。
そうした状態を、アサーティブではないため「ノンアサーティブ」と言います。
アサーティブコミュニケーションだと、自分の意見を主張するけれども相手の意見も聞くため、相手は「一方的に言われた感」や「自分の意見をないがしろにされた感」がなく、お互い気持ちよくコミュニケーションを取れるようになります。
お互いが違う意見を主張し合って本当にうまくいくのかな?
衝突する可能性が高いところを、アサーションだと衝突や一方が我慢することがないようにもっていけるんだよ
アサーションのメリット
仕事でもプライベートでも、関係を維持したいと思うがゆえに言えずに溜め込んだり、やんわり伝えたつもりでも曲がって伝わってしまったり・・・多くの人が難しさを感じ、悩むところでアサーションは効果的です。
アサーションのデメリット
メリットの方が多いし取り沙汰されていますが、どんな事柄もメリットがあればデメリットも併せ持っているものなのであえて記しておきます。
まずは自分のコミュニケーションタイプを知ることから
では具体的にどうやればいいのか?
その前にまず、自分のコミュニケーションのタイプを知ることから入るのをおすすめします。自分のタイプを知ることで、どこができていて何をこれから補っていけばいいかが明確になり効率的だからです。
主に、アグレッシブ(攻撃的)、パッシブ(受け身的)、ネチネチ(嫌がらせ的)、アサーティブの4タイプに分けられます。よくドラえもんのキャラクターに例えられますが、ドラえもんになじみのある人は、アグレッシブ=ジャイアン、パッシブ=のび太、ネチネチ=スネ夫、アサーティブ=しずかちゃんとするとわかりやすいかもしれません。
アグレッシブ(攻撃的) | パッシブ(受け身的) | ネチネチ(嫌がらせ的) | アサーティブ | |
自分を尊重 | ○ | × | ▲ | ○ |
相手を尊重 | × | ○ | × | ○ |
ストレス度 | 一時的に高まっても発散するので貯まりにくい | 自分の意見を言うことができず溜め込みやすいので高め | 自分にも相手にも素直にストレートに表現していないのでストレスは高め | 双方にベストな落としどころを見つけるので低め |
関係構築性 | 攻撃した後、よっぽどのフォローをしなければ関係構築は難しい | 相手優先でコミュニケーションをとるので関係は続きやすい | いわゆる「嫌味な人」と捉えられがちなので、関係構築はしづらい | 関係構築性は高い |
①アグレッシブ:自分の主張だけを通す。相手が何を言おうとねじ伏せる感じ。
②パッシブ:相手から主張されて反論があっても自分を抑えて我慢してしまう。そして後でストレスを抱えやすい。
③ネチネチ:自分の主張を、直接相手に伝えるのではなく、「舌打ち」「話の途中で時計を見たり貧乏ゆすり」「こちらがミスしたりすると溜息をつく」「こちらに聞こえるように他の人に嫌味を言う」「直接言わずSNSなどで批評する」など、間接的にイヤな形で相手に伝える
④アサーティブ:相手からの主張と自分の主張を尊重しながらwin―winの関係を築いていくので自分も生きやすいし、相手との関係を悪化させづらい
パターン例
あなたは仕事から自宅に帰り、眠りにつこうとしています。しかし、連日その時分に、お隣さんから音楽関係の仕事をしているのか、深夜にわたってギターの演奏と歌声が聞こえてきて、睡眠不足に悩まされています。あなたの言動に近いものは次のうちどれでしょうか?
A. お隣さんのところへ行き、怒りをぶつける
B. お隣さんに、連日この時間帯に演奏する理由を尋ね、こちらが睡眠不足に陥っていること、スタジオなどを借りてできないか等、相手の事情を汲みながら相談・交渉する
C. お隣さんの部屋に接している側の壁を蹴ったり叩いたりして間接的に訴える、あるいは、他のご近所さんにお隣さんの悪口を言う
D. あまり効かないがノイズキャンセリングイヤホンや睡眠薬を使用してひたすら我慢する
この場合、
Aは「アグレッシブ」、Bは「アサーティブ」、Cは「ネチネチ」、Dは「パッシブ」にあたります。
あなたはどのタイプに当てはまりましたか?
ほんの一例ですが、同じ場面でもコミュニケーションパターンがそれぞれです。
上司や先輩の前ではパッシブ型、自分の大切な価値観が侵害されたときはアグレッシブになることがある等、相手や状況によって変わるということもあるでしょう。
HSPに多そうなパッシブ型は、自分の意志や価値観を自分の中にしまって相手の方を尊重するあまり、相手に振り回されてストレスを溜めやすい傾向にあります。溜まったストレスを発散せずにそのままいくといつか爆発してアグレッシブへ変わったり、心身の健康を損ねてしまうリスクを抱えているため注意が必要です。
今までのコミュニケーションのスタイルをいきなり変えるのは難しいですが、自分の心がけ次第で徐々に変えることは可能だと思います。今後どうしていくか、それも含めてまずは自分のコミュニケーションの傾向を知るということが大事です。
アサーションの根幹にあるもの
アサーティブに対応するには、「自分と相手の両方を尊重する」姿勢がベースとなります。
その姿勢を保つために、「率直」「誠実」「対等」「自己責任」の4つの柱を常に念頭に置きます。
この4つが一つでも欠けずに、すべて揃って初めてアサーティブになるというわけです。
一つずつ見ていきましょう。
【率直】
相手に理解してもらえるよう、傷つけないよう説明しようとするとつい回りくどくなってしまいがちです。そうなると、何が主訴なのかわかりにくくなってしまう可能性があります。率直といっても言わなくてもいいことまでダイレクトに伝えてはなりません。率直にいったら相手が傷つくんじゃない?と思われるかもしれませんが、それを緩和させる「クッション言葉」を駆使していくとよいです。的を絞って、クッション言葉をいれながら上手に伝えていく。
【誠実】
相手に理解してもらえるよう、傷つけないよう説明しようとするとつい回りくどくなってしまいがちです。そうなると、何が主訴なのかわかりにくくなってしまう可能性があります。率直といっても言わなくてもいいことまでダイレクトに伝えてはなりません。率直にいったら相手が傷つくんじゃない?と思われるかもしれませんが、それを緩和させる「クッション言葉」を駆使していくとよいです。的を絞って、クッション言葉をいれながら上手に伝えていく。
【対等】
兄弟、親子、先輩後輩、上司と部下、師匠と弟子、社会には様々な上下関係があります。いやいや対等と言ったって上司に歯向かえないしなぁ・・・と思うでしょう。歯向かう、ということではありません。奴隷と亭主の時代ではないのですからどんな関係であれ、どんな人にだって人権があります。立場や経済力、学歴、社会的地位などを超えて、平等に意見を主張したり、断ったりする権利があります。なので、堂々と主張してよいのです。逆に自分の方が立場が上だとか年上だとしても、見下すのは対等ではないのでいけません。主張する権利がある。でも、へりくだり過ぎるのも見下すのもNG。自分が思っている以上に自分の心のうちが話の中で何となく相手に伝わってしまうことがあるので、この心の姿勢はとても大事です。また、伝え方で伝わり方がだいぶ変わってくるので注意が必要です。
【自己責任】
どういうシチュエーションで相手を誰にしてどんなコミュニケーションをとるのか、それは自分次第であり、というかそれを判断・決定するのは自分にしかできないのです。この場面で「アグレッシブ」にいくか、「パッシブ」でいくか、その後で自分が後悔することになったとしても自分で決めたことだからと、自分で責任を取るということ。
場数を踏むことが必要
「アサーティブコミュニケーションをとろうとやってみたけれど自分の納得のいく落としどころまでいかなかった。」
そういうこともあるでしょう。
スムーズにいくまで場数を踏み、慣れるまで時間もかかると思います。かくいう私もアサーティブにできない時はたくさんありますし自分の思い通りにいかないこともます。
ちなみに私は学生の頃、今よりずっと主張しない受け身タイプ、超パッシブでした。今思えばあんなに主張しなすぎてよくやってこれたなと思うほどです。それが社会人になって様々な年齢層や国籍、立場の人と関わっていくうちに、“おとなしくしていると損をする”と感じるようになり、「これはさすがに・・・!」と思う時は主張をしていくようになりました。主張をすることで相手に自分はこういうつもりなんだということを気づいて分かってもらえたり、自分が被害を被ったりするのを防ぐことができましたし、主張することで自分に多少は誇りを持てるようにもなりました。でも完ぺきではありません。時にはあの場では主張しない方がよかったかなとか、あのことよりも別のことを主張したほうが響いたかもしれなかったなと失敗を感じることもあります。
相手は人であり、価値観も違えばコミュニケーションの取り方も様々なので、いくらこちらがアサーティブを心がけてもカチンとくる返しをされたり、どんな反応が返ってくるかわからない部分があります。ただ、そうした中でも自分の対応を変えてみると相手も変わってくることは結構あります。
変わろうと思ったなら、一歩踏み出して継続する。実践してみて失敗すれば反省し次に生かしながら磨きをかける。そのようにして継続的にアサーティブコミュニケーションのスタンスで関わっていると、周りが、環境が良い方向に変化くるかもしれません^^
次回はいよいよ具体的なアサーティブコミュニケーションのやり方を解説いたします。