そもそもHSPとは?
HSP(Highly Sensitive Person)とは、些細な刺激や相手の感情などに過剰に反応しやすく、そのため気疲れしやすい性質をもった人、つまり「とても繊細で生きづらい人」のことを言います。
「とても繊細」「とても感受性が高い」だけならいいのですが、それゆえ些細な刺激でも(本人にとっては些細ではない場合があります)キャッチするので心が動揺しストレスを抱えやすく生きづらい、というのが悩みどころなのです。
「繊細」という言葉は昔からありますが、「HSP」という言葉は90年代後半、カリフォルニアの心理学者エイレン・アーロン博士が提唱した概念です。
割と最近なんですね!裏を返せば、理解が進み始めたところということです。
「刺激」は人によるものに限らず、光や音、肌に触れるものなど、外からの刺激はすべて含みます。
HSP=欠点ではないのですが、それだけ影響を受ける範囲が幅広ければ、それはやっぱり疲れてしまいます。
「もっと楽に生きたい!」
「どうすればうまくこの性質と付き合っていけるのか?」
と思うのはごく自然なことです。
結局は、刺激を“どう解釈するか”ということなのでしょうけど、性質・気質というのは簡単に変えられるものではなく、それがマイナスに出るとつらいのです。
そして、よく勘違いされがちですが病気や障害ではありません。
HSPってアイドルグループのことじゃなかったのか!
“HSP48”みたいな?
そうそう!
48どころか、5人に1人はHSPと言われているから億単位だよ
35億
ブルゾンちえみか!
HSPにも種類がある!?
ここまでお話しすると、
「刺激→疲れる→つらい→刺激を避ける→内向的になる」
といったサイクルが見えそうですが、必ずしもそうではなく、実際のところ、同じHSPと言われる人の中でも違いがあります。
1.内向的か外向的か
2.刺激を求めるか求めないか
この2つの軸によって、主に以下の4つのタイプ(HSP、HSE、HSS型HSE、HSS型HSP)に分けられます。
まず、英語の略語の意味を整理します。
①HSP(内向型HSP、非HSS型HSPとも)
・繊細で感受性が高い
・人との関わりが好きではない、苦手、避けようとする
・刺激を好まず、環境が変わったり冒険やリスクなどを回避しようとする
・一人で過ごす時間を好む
先ほどの「刺激→疲れる→つらい→刺激を避ける→内向的になる」といったサイクルになりがちで、HSPの大体7割程度がこのタイプです。外に出ることで受ける刺激や人との交流による疲れを回避するために、結果内向的になり一人で熟考することになる。
例)休日は外に出かけず、住み慣れた自分の部屋でゆっくり落ち着きたい。
『人やあらゆる刺激に敏感で苦手、受け取ってストレスを避ける、だから内向的』という理に適った感じ
②HSE(外向型HSP)
・繊細で感受性が高い
・人との関わりが好きだが、傷つけられたり拒絶されることを恐れる
・刺激は苦手
→人との交流は進んでするけれど、人付き合いによるネガティブな刺激や五感による刺激は好まない。
例)チームワークでルーティーン作業をする
たとえが合っているかわからないけど、『お化けが怖いのにお化け屋敷に入る』みたいな感じ?
わかる、一見矛盾している感じを言いたいんだよね。
社会に順応しようとした結果、矛盾が生まれたとも言われているよ
一人でいるよりも、人と会ったり誰かと自分の気持ちを共有したりすることで元気になることがある
③HSS型HSE(刺激追求型外向的HSP)
・繊細で感受性が高い
・人との関わりに積極的
・刺激を求めるが、敏感で傷つきやすくもある
→自分から積極的に人と関わっていき、新たなことにチャレンジしたりといった刺激にも果敢に飛び込むので頼れるリーダー的存在でもあるが、刺激に強いわけではなく、裏でひどく傷ついていたり疲れていたりする
例)みんなと連携してリスクやプレッシャーのある仕事をこなす
『明るく活動的』なイメージ、傍から見てわかりにくいので『隠れ繊細さん』とも
④HSS型HSP
・繊細で感受性が高い
・外向的ではない、一人の時間を大切にする
・何か新しいことに挑戦したりといった刺激を求める
→繊細で疲れるとわかっていても好奇心旺盛なため、興味に従い刺激を求めていく。人付き合いには積極的ではないため、自己完結型で向かっていく傾向がある。
例)興味を持ったら一人でも新たな知らない土地に赴く
『我が道を進む探究者』のようなイメージ
4つのタイプまとめ
①【HSP(内向型)】:「非HSS型HSP」とも。人との関わりやリスクを避け、一人の時間が至福な内向的なタイプ。自分から傷つく要因である人との関わりや刺激を避けるため、一見傷つくことは少なそうだが、生きていく上で特に仕事上関わらなければいけなかったりするので、自分の意に反してそれが余計にストレスになる。HSP人口の約7割を占める。
②【HSE(外向型)】:人との関わりが好きで気分転換になることもあるが、同時に、人から拒絶や傷つけられるのが怖いという側面もあるのが特徴。人との関わりは好きでも刺激は苦手で安定志向。HSPの約3割に存在する。
③【HSS型HSE(刺激追求型・外向型)】:社交的で人と関わることに積極的で刺激も求めていくので、リーダーシップがある。それで精神が強靭であればよいが、些細なことで傷つきやすい面も持ち合わせているため、(些細なことで傷つきやすい)×(人と関わるのが好き(関わりが多い))×(刺激を求める)=自ら進んで関わっていくので、知らないうちにどっと疲れて傷ついたりする傾向がある
④【HSS型HSP(刺激追求型)】:とにかく好奇心旺盛で、疲れるとわかっていても刺激を求める。刺激を求めても社交的ではないので一人で考え突き進んでいく。HSPの中で「天才」気質といわれるタイプで、約0.6割ほどしかいない。
いかがでしょうか、当てはまるものはありましたか?
みんな『繊細で感受性が高い』というのは共通しているけど、刺激の元から回避するのか向かっていくのか分かれるのが興味深い。
そうだね。人との関わりも刺激も両方とも苦手というHSPが一番つらいと個人的には思うよ。
でもさ、繊細で傷つき疲れやすいのに人や刺激に積極的なタイプもなかなか他人に理解されにくくて苦労しそうだよね。
このようにHSPと一口にいっても分類され、それぞれに違いがありますが、共通している部分もあります。
どのHSPにも共通している特徴
D(Depth of processing):物事を深く広く考える
O(Overstimulation):非常に刺激に敏感
E(Empathy and emotional responsiveness):強い共感力と感情的反応の高さ
S(Sensitivity to subtleties):五感の鋭さ
通称「DOES(ダズ)」といいます。
つまり、(DOES)+(内向性か外向性)+(刺激追求型か刺激回避型)=4つのうちいずれかのタイプ
ということです。
ちなみに、HSPのこどもバージョンを『HSC(Highly Sensitive Child)』といいます。
生まれつきの気質というのですから、HSCがいても不思議ではありませんね。わざわざ命名しなくてもいい気もしますが・・・。
HSPの原因
では、なぜHSPになるのか?
HSPは、生まれつきの気質(先天性)と生育環境(後天性)が原因と言われています。
そして、生まれつきの気質を形成するのは、生まれつきの脳機能が関係しているということです。
脳の側頭葉の内側にアーモンド形の神経細胞『扁桃体』があります。扁桃体の役割としては、人間の情動や記憶を司り『快・不快』を判断することで、もともと身を危険から守るためにある部位です。
生まれつきにこの扁桃体の動きが活発だと、不安や恐怖などネガティブな感情に敏感になるので、HSPになりやすいそうです。
ちなみに、身の危険を守るための機能なら、他の動物にとっても子孫を残していくために重要な機能ということでもあるので、人間以外の100を超える多くの動物もHSP気質を持っているそうです。
たとえば、犬の2倍の嗅覚を持つゾウとか?
危険をいち早く察知するためとはいえ、すごく疲れそうね。
学生の時よりも社会人になってから、生きづらさ疲れやすさを感じる方もいらっしゃるでしょう。
それはきっと、HSPが浸透しておらず理解があまりない社会の中にいて、学生の時より社会人の方がよりシビアに周りから評価され、どちらかというとHSP気質はネガティブに見られがちだからではないかと考えています。
もともとの脳機能により、繊細で感受性が高い。
でもそれだけではなく、成長発達する過程で学校や家庭などからいろいろと経験しながら学んでいくのであり、学びの環境というのは、HSPの生きづらさを大きく左右するものでしょう。
何が言いたいかというと、原因が先天的なもの(生まれつきの気質)だけではなく、後天的なもの(環境)もあるということは、後天的なもの、つまり環境は自分の意志次第で変えられるのではないかと言いたいわけです。自分で適した環境に身を置けば、HSP気質がマイナスに大きく表れるのを防げると考えることができます。
「適した環境」は果たしてあるのか?
ということですが、まだ世間一般にHSPは認知されておらず、理解と大きい器でもって長所として活かせる環境はなかなか少ないのが現状でしょう。環境と言いましたが、それを作るのは結局『人』です。
例えば、些細な事で本人は真剣に気を揉んでいるとします。そこに、周りが「気にし過ぎじゃない?」とか「そんなこといちいち気にするな」と返す人たちか、「よく気づいてくれたね!すごいよ」「気づいてくれたおかげで助かったよ」と言ってくれる人たちのいる環境かで本人の心理状態や生きづらさは変わってくるのではないでしょうか。
HSPが日本人に特に多いと言われる理由
HSPになる原因を解説しましたが、特に日本人は国民性によってHSPになる割合が多いと言われています。
HSPになる原因は「生まれつきの気質+生育環境」とお伝えしました。
国民性=生育環境といっても言い過ぎではないくらい密接な関係です。
国民性というのは、これまでの歴史や長い間培われてきた独自の文化・慣習などからくるものです。
日本人は、はるか昔の縄文時代から、生きるか死ぬかの厳しい環境の中で、マンモスなど大きな動物を狩猟したり、危険から身を守るために周りの人と知恵や力を合わせて生きながらえてきました。
弥生時代になると稲作が広がりますが、そこでも稲作に必要な治水や灌漑のために村という社会の中で共同作業を行うようになります。やがて権力者が現れて、主従関係、礼や調和を重んじるなど、今日の日本社会の基盤が作られてきました。
島国なので、大陸続きの欧米などとは違い、他国へ簡単に移動することはできません。
脱出ができないとなると、そこの社会の中でうまくやっていかないと生きていけない。
“村八分”“島流し”といった言葉も、その社会の人々から嫌われたら終わり、だから相手の顔色を窺ったり、本音と建て前をきちんと弁えたり、和を重んじる、そんな日本の風土や歴史を物語っています。そうした中で培われたのが、先人の知恵、処世術でした。
「尊敬語・丁寧語・謙譲語」も相手と自分の立場や関係を位置付けて相手を不快にさせないようにするための知恵と言えるでしょう。場の空気を読まないといけない、みんなと同じでなければいけない等、グローバル社会である今でも未だ残っているようです。学校や家庭での教育、会社などの組織の在り方にも影響を与えていることはいうまでもありません。
このような「和」の精神などの日本の文化、社会はもちろん素晴らしく、それが今まで日本を支え発展させてきたことも確かです。世界の人々が尊敬し、世界に誇れる国民性・文化でもあります。
HSP以前に、もともと日本人は四季の移ろい、機微を感じて多くの季語を作って歌を詠んでみたり、色も『四十八茶百鼠』というくらい、微妙な色の配合で少しずつ色の変化を出して楽しんだり・・・こうしたことは繊細に物事を感じ取ることができないと叶わないことだと思います。
ただ、HSPにとってどう働くのかと聞かれれば、残念ながら生きづらく、HSP気質を増幅させる要素を含んでいるのではないかと考えてしまいます。
それから、歴史は基本変わりませんが、風潮は時代とともに変わりますね。
例えば「当たって砕けろ」と一昔前は言ったものですが、今は「成功する確信が持てたら行く」といった、慎重な方向へシフトしているように感じます。
なぜこんな歴史や風潮の話をするのかというと、HSPが多い日本の背景を知ることは、対処するうえでも必要だからです。ルーツや背景を知ることで、自分がHSPであることを受け入れられるようになったり、捉え方・考え方などが変わってきたり、疑問が解けてくるかもしれません。